リトル・トリー(普及版)
フォレスト・カーター 著
和田穹男 訳
普及版には藤川秀之氏による挿絵を収録しておりません。ご注意ください。
美しい自然のなか、両親を亡くした5歳の少年は祖父母の愛情に包まれてインディアンのライフ・スタイルと精神性を学んでゆく。優しさと痛みとユーモアにあふれたこの物語は、きわめて素朴な語り口ながら、魂の最深部からの共感を呼び覚ましてくれる。日本で、アメリカで、あらゆる層の人々から賞賛された感動のベスト・ロングセラー
プエブロ族の古老たちが語る単純だが意味深い生き方を、彼らの肖像画とともに収録した全米ロングセラー。その詩は、無数の名詩選や教科書に転載され、追悼式や結婚式でも朗読されてきた。
山は冬の夕日を浴びている
本文より
ぼくらは木漏れ日を踏んでくだってゆく
谷間の小屋へと続く細道を
山七面鳥の通り道を
チェロキーはみんな知っている
今こうしてこここにいる
これこそ天国なのだと
久方ぶりの感動だった。それも心の底からの。
山から噴き出す清冽な湧水に身体から心まで洗われた気がした。
読み終わってすぐさま電話をとり出版社に二十部注文した。
愛する人々に配りたかったからだ。
決して幸せなだけではない、あの土地の血生臭さや哀しみがこんなにもしみこんでいる話なのに、人生のいろいろな場面 でまるで自分のことだったかのように、この子の気持ちがよみがえってくる。自分の家族みたいに彼の家族を思いだす。
この本は一生の友だちだ
『リトル・トリー』は、いつの時代にも新しい世代の人たちによってくりかえし発見され、読みつがれてゆくべき『ハックルベリー・フィンの冒険』などと肩を並べうるまれな本である。全篇美しく滋味に富んでおり、読者はとてつもないおかしさに笑わせられるかと思うと、痛切な感情にはげしく胸を揺すぶられるにちがいない。……万人の精神に語りかけ、魂の最深部に訴えかける力を持っているのである。
『リトル・トリー』はチェロキーの編む籠のようだ。自然が恵んでくれた材料で編まれ、デザインはシンプルで力強く、たくさんのものを運べる。この本は「小さな古典」と呼ばれてきたが、私の感じではそれ以上のものだ。……環境、家族の絆、人種差別、人間関係……この本はそのすべての問題について深い関心を寄せている。この本は今の世に求められている。
1925年、アメリカのアラバマ州に生まれる。遠くチェロキー・インディアンの血を引き、それを誇りにした。作家として出発したのは48歳。第一作の『テキサスへ』はクリント・イーストウッド監督・主演により映画化された。『リトル・トリー』は、彼の心の原郷であったインディアンの世界を、少年のみずみずしい感覚に託してうたいあげた作品。リトル・トリーは祖父から授けられた著者のインディアン・ネーム。わずか四つの作品を残し、1979年54歳で急死。
1940年神戸に生まれる。早稲田大学仏文科中退、東京外国語大学フランス語科卒。
書籍編集を経て、翻訳業、画業に転ず。
訳書に『リトル・トリー』『ジェロニモ』『あの夏の鳳仙花』『熱きアラスカ魂-最後のフロンティア・インディアンは語る』(以上めるくまーる刊)など。
2010年10月22日(金)、中京テレビの番組の中で、ヴィレッジヴァンガード様お勧めの本として、『リトル・トリー』が紹介されました。
『美的』 2009年5月号(小学館)、スペシャル対談(2)-倉田真由美さん×釈由美子さん(68-69ページ)の中で、リトル・トリーが紹介されました。
こんな本もいかがですか?