白井晟一の建築 V 和風の創造
白井晟一研究所 著
白井昱磨(いくま)構成
白井晟一は「創造」の問題として日本の「伝統」を積極的に論じている。それは「伝統」を形態や様式でとらえるのではなく、日本文化の独特な原思想ともいえる潜在的な能力に目を向けるものだった。白井が目指したのは日本的創造としての「和風」であり、あらゆる部分が緊密に結合して「渾然とした調和」に全体が統一される空間だった。
今回はそうした白井の思想を現す柿腸舎、影熙亭、昨雪軒、雲伴居を取り上げた。また「白井晟一と原爆堂の背景(下)」を解説として収録した。
建築家。1905年京都生まれ。秋ノ宮村役場、松井田町役場、善照寺で高村光太郎賞、親和銀行本店で毎日芸術賞、芸術院賞などを受賞した20世紀日本の代表的建築家の一人。
ヒロシマ、ナガサキの悲劇の経験から生まれた「原爆堂計画」(1955)は核の文明に対する根源的な問いかけとして特筆される。他にノアビル、松濤美術館、石水館、呉羽の舎、虚白庵、昨雪軒などがよく知られる。
書、装丁にもすぐれた業績を遺し、エセー集に『無窓』(1979 筑摩書房、2010 晶文社)がある。1983年没。
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