大庭みな子全詩集
大庭みな子 著
函画/伊藤若冲『菜蟲譜』 佐野市立吉澤記念美術館の『菜蟲譜』ページ
本文挿画/伊藤若冲『玄圃瑤華』 早稲田大学図書館の『玄圃瑤華』ページ
大庭みな子の詩業における集大成。
過去に発表したすべての作品を収録。
間違いなく私の文学の出発は詩作だった……散文を書いていくために欠かすことの出来ないエチュードだと考えて、折にふれ内部から衝き上げてくる言葉を詩のかたちで書き留めていた。私の文学の源泉に詩があるのは明らかであり、秘かに「私は詩人だ」と思い続けてきた。
あなたの言葉は
濡れた折紙みたいです
わたしの言葉は
こごった松やにみたいです
赤い濡れた折紙で
鶴を折ろうとすると
紙は破れて
指を赤く染めました
あなたは鼻の頭に
黒い松やにをつけて
くしゃみをしています
1930年、東京生まれ。津田塾大卒。68年、処女作『三匹の蟹』で群像新人賞、芥川賞を受賞。
東京生まれ。津田塾大卒。68年、処女作『三匹の蟹』で群像新人賞、芥川賞を受賞。代表作に、谷崎潤一郎賞作『寂兮寥兮(かたちもなく)』、野間文芸賞作『啼く鳥の』、川端康成文学賞作『赤い満月』など。
小説の他にも、詩、エッセイ、評論、翻訳など幅広い著作を生み出している。芥川賞など数々の賞の選考委員もつとめた。
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