ヴィシュヌの死
マニル・スーリー 著
和田穹男 訳
インド文学が元気だ。
インド人数学教授の小説家デビュー作。
哀切かつ抱腹絶倒の物語。
騙し、盗み、娼婦に恋し、飲んだくれて生きた男ヴィシュヌが、ボンベイのアパートの階段で死につつある。神と同名のその男が暮らしてきた踊り場は今、賎と聖、下界と天上界の分岐点だ。神の座へと一人階段を上がっていく彼の魂。一方、アパート住人は、若い恋人達の駆け落ちに上を下への大騒ぎ。醜くもあれば美しくもある、人間の諸相を描く傑作。
本書の最初の1ページを読んだだけで、驚くべきデビュー作と知った。高い評価と多くの読者を獲得するに違いない。
読者はうっとりと魅了され、かと思うと今度は大笑いさせられる。昂揚と悲痛、劇(ドラマ)と茶番(ファルス)のみごとなブレンド。
1959年、インドのボンベイ生まれ。アメリカに留学、応用数学の博士号を取得。現在メリーランド大学数学教授。処女作『ヴィシュヌの死』は、2001年度B&Nディスカヴァー・ブック賞第1位に選ばれるとともに、ペン/フォークナー賞にもノミネートされ、さらにドイツではコリナ賞受賞。世界十数か国で翻訳されている。
1940年神戸に生まれる。早稲田大学仏文科中退、東京外国語大学フランス語科卒。書籍編集を経て、翻訳業、画業に転ず。訳書に『リトル・トリー』『ジェロニモ』『あの夏の鳳仙花』『熱きアラスカ魂-最後のフロンティア・インディアンは語る』(以上めるくまーる刊)など。